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004




引くに引けず男について靴を脱いで部屋に上がる。
立て付けの悪いガラスの引き戸を開けた向こうは一護の部屋と変わらない四畳半一間。
しかし床には毛足の長いラグが敷かれ,窓には遮光カーテンが引かれている。
窓にはしっかりと隙間風防止の措置がされていて住み心地はこちらの部屋の方が格段に上だろうというのがわかる。


そんな部屋の中,窓を左手にした壁際には大型のデスクが設えられ,20インチモニタとキィボードが置かれていた。
モニタ上には画面いっぱいに何かの画像が開かれていて,どうやら男が仕事中だったらしいことが知れた。


更に視線を巡らせると,あの喘ぎ声の正体が露になった。
デスクの対面の壁にどん,と置かれた46インチはあろうかと云う大型テレビ。
そこでは毛むくじゃらの男とやけに胸の大きな女がめちゃくちゃに絡み合っていた。


……AVかよ!
納得すると同時に思わず視線が釘付けになる。
大きく割り開かれた女の肉付きの良い腿に男の指が食い込んでいる。
こちらに局部を見せ付けるようにして開かれたそこに,節くれだった指が突きたてられぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てている。
そこには申し訳程度にモザイクが入っていたが,一護の目にはないも同然に見えた。


「誤解,解けましたかね」


すぐ傍で男の声がした。
一護は視線を絡め取って離そうとしない映像から引き剥がすように視線を逸らし,男の方に向き直る。
男は分厚いレンズの向こうに目元を隠し,口の端に笑みを浮かべて一護を見つめていた。


「…ッ!つーか!なんで,なんでこんなん!」
「あー,だって仕事っスもん」
「仕事って!」
「これ,よっく見て」


男は一護の背後に回ると頬に両手を添えてテレビの方へ向けた。
ちゅぷ,ちゅぷ,くちゅり。
いつの間にか場面は変わって女の局部に顔を埋める男の横顔が大写しになっている。
口から伸びる舌の動きはモザイクに阻まれているものの,それを目にした一護はずくん,と身体の芯に熱が点るのを感じてしまう。


「コレがアタシの仕事」
「わ,けわかんね…」
「それはキミがイヤラシイ目で見てるからですよン」


くすくす,くすくす。
揶揄うような声にかぁ,と頬が赤らむのを感じた。
頬に触れる男の手を邪険に振り払うと「ふざけんな!」と噛み付くように吠えた。
男は「あははは。図星?」と声を上げて笑うと,「だーかーら」と云いながらデスクの端に腰を下ろした。


「コレ。こういうのにね,モザイク入れるのがアタシの仕事」


男がマウスをクリックするとモニタの中で画像が収縮し,テレビから聞こえるものとは違う喘ぎ声が響いた。








(2009.01.23)
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