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003




がち,がちがち,と蝶番を軋ませてドアが開く。
一護はその隙間から現れた顔を目にするや否や,荒れ狂う怒りのままに怒鳴りつけた。


「テメェ近所迷惑考えろくのクソボケ!女連れ込むなら俺のいない時間にしろ!サカリのついた猫じゃあるまいししょっちゅうしょっちゅうアンアンアンアン云わせてんじゃねぇよ!こっちはテメェのせいで…!テメェのせいで…!ああ,クソ!!!」


息継ぎもなしに怒鳴りつけたせいでくらりと視界が揺れた。
ドアの縁に手をついてなんとか倒れこむのを堪えて,荒く息を吐いていると一護の怒声を微塵も気にしない涼しい声が「大丈夫?」と聞いてきた。


「だい,じょうぶ…じゃねぇよッ!」


怒り再燃。
一護は壁についた手を離すと,男に掴みかかった。
しかし再び立ち眩みに見舞われ足元がぐらりと揺らぐ。
結果,掴みかかったはずの男に身体を支えられてしまうことになってしまった。


「…ええと,何かいろいろ誤解があるようなんスけど」


一護の腰を抱くようにして支えた男が困ったように微笑んだ。


「…誤解,てなんだよ。つーかこの腕放せ!」
「離したらキミ倒れますよン? それより,オカシイと思いません?」


オカシイ?何がだ?
思わずきょとんとした顔をした一護は,男が何を云っているかすぐに気づいた。
男はここにいる。それなのに女の喘ぎ声は続いているのだ。


「――ぃッ…,だ,…だめ……,そこ。あ,あ,あぁ…ッ」


一体,コレは。
思わず男の背後に視線をやると,カーテンの引かれた窓まで一直線に見渡せる中のどこにも女の姿はなかった。


どういう,ことだ?
男が着込んだ半纏の襟首をきつく掴んでいた手から力を抜き,自分より頭半分上にある顔を見上げる。
すると分厚いレンズの眼鏡をかけた男はくすりと笑って「とりあえず,ここじゃなんですし中へドウゾ」と一護を部屋の中へ誘った。








(2009.01.22)
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