005
一護とて妙齢の男子だ。
このテのビデオのお世話になったことがないわけではない。
しかしその想像力を阻害する――時には更に煽るようなこともあったが――ソレが人の手によってなされている,と考えたことはなかった。
それで生計を立てている人間がいるなどと,考えたことはなかった。
「……それ,儲かんの」
ぽつりと漏れた一護の言葉に,虚を突かれたように男が瞠目した。
その表情に一護がシマッタ,と我に返り「な,なんでもない」と首を振ると,すぐにふわりと口元を綻ばせて「ひとそれぞれじゃないスかねぇ」と暢気に云う。
云いながら「突っ立ってないでその辺坐ってくださいな」と促すことも忘れない。
一護は云われるがままにラグに腰を下ろしたが,けれども背後と前方で繰り広げられるマグワイと喘ぎ声にどうしていいかわからなくなる。
そんな一護を見つめ,男は可笑しそうに小さく喉を鳴らすとデスクに置いたコントローラでテレビのボリュウムをミュートに設定し,マウスを動かしてモニタの方の映像も止めた。
ほう,と息を吐いた一護に椅子ごと向き直るとその上に片膝を引き上げ,それを抱くようにしてくすりと笑った。
「こういう仕事に興味,あります?」
「興味っつーか…」
言葉を濁しながら男の顔を見上げ,困ったように口を噤む。
その動作を男は肯定の返事と受け取ったのか小さく頷くと勝手に説明を始めた。
「技術自体はそんなに難しいモノじゃないんスよ。コマごとにヤバそうな範囲指定してマスクかけて…ってマウス操作だけっスから。ただねぇ。その後ろでやってるのとかイワユル『ギリモザ』のヤツとかは矢鱈と手がかかる」
「ギリモザ?」
耳慣れない言葉に思わず聞き返すと男は嬉々として頷き身振り手振りを交えて解説する。
「例えばフェラの場面なんか唇の上下に合わせてマスクのベジェ曲線をフレーム単位で動かさないといけない。…って意味わかる?」
一護は素直に首を横に振った。
男は「んんんん」と少し考えこむ素振りをした後,テレビのコントローラを手に一護の横に腰を下ろし,「ええとね」とコントローラの早送りの釦を押した。
(2009.01.24)