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翌朝,洗面所に向かうと浦原が居た。
「オハヨーゴザイマス」
昨日のことなどまるでなかったかのように笑顔で声をかけてくる。
黒崎はそれには応えず,ひとつ空けた蛇口に向かった。
「どうして無視するんスか」
まるで心から不思議がってるような口調が黒崎の神経を逆撫でする。
黒崎は無視を決め込んだ。が,浦原はしつこい。
挙句にわざわざすぐ傍までやってきて,黒崎が使う隣の洗面台に寄りかかった。
「ねえ,黒崎サン」
「また現場に出る前に云っておく」
黒崎は苛立ちを隠しもしない声で云った。
「何?」
「昨日の話だ。あれはやりすぎだ」
「すぐ慣れますよン。心配ない」
「…あんた,前はどこにいた。奇襲隊(レンジャー)か」
「そっスね」
「俺は七年諜報部に居た。おかげであらゆるクソ溜めを覗いてきた。あんたみたいな出鱈目な道を行くヤツも居た」
「なら,キミの行く道は絶対に正しいの」
応えられない黒崎。
浦原はそんな黒崎を見つめ,小さく喉を鳴らして笑った。
「これからが楽しみっスね」
2012.08.15