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前任の班長が殉職し,新しい班長が配属されてきたのは任期明けまで残すところ三ヶ月となった日のことだった。

「浦原です。どうぞよろしく」

そういって手を差し出した新しい班長は人当たりは至極よいものの,何を考えているのかさっぱりわからない胡散臭さがあった。

初任務はその日の午後。
街中の路上に仕掛けられた即席爆発装置(IED)の解除と撤去だった。
防爆服に身を包んだ浦原は鼻歌混じりに爆弾へと近づいていく。
援護と支援に回る黒崎と白崎はそれを見守っていた。
設置場所と思われる位置まで約10メートルの位置に到達した時,浦原の手が動き何かを放り投げた。
途端に辺りは煙幕に包まれる。

「シロ!塀の上昇れ。様子が見えねえ!」

塀の上から様子を窺う白崎。
煙幕の合間に,悠々と爆弾へ近づいていく浦原が見える。

「見えた」
「浦原!返事をしろ!」

浦原は応じない。
耳に押し当てたヘッドフォン越しに浦原の呼吸音と掠れた鼻歌が聞こえる。

「一護,あいつ頭イカれてんの?」

戸惑うというよりも呆れた口調の白崎を睨みつけ,黒崎は声を荒げた。

「浦原!無視するな!」

その後も浦原が呼びかけに応じることはなく,爆弾の元に到着すると速やかに処理を終えた。
掌に隠れてしまうほどの大きさの起爆装置を戦利品に待機する班員たちの下へ浦原が戻って来る。
手振りでヘルメットをはずす手伝いを頼まれ,渋々黒埼が近づいた。
外したヘルメットの下には浦原のにやけ顔があった。

「成功っスね。初めての共同作業」
「馬鹿云うな。共同作業ってのは声をかけたら返事をするもんだ」
「あはは。デートのつもり?」

あくまでふざける浦原に腸が煮えくり返るような心地がした。

「ふざけるな。デートじゃねえ任務の遂行だ。いいか,俺の任務はあんたを守ることだ。二度と無線を無視するような真似はするな」

真剣な面持ちで云う黒崎を見つめ,浦原は淡く笑った。

「これは戦争っスよ」

黒崎は言葉を失い,浦原を見つめる。
任期は残り三ヶ月。やっと終わりが見えてきたというのに,こんなヤツに命を預けなければならないのか。
云いたいことは腐るほどあった。けれども,云ったところで通じるとも思えなかった。
たった数時間のやりとりで,それをうんざりするほど痛感していた。

無言で踵を返し,その場を離れる。
腹の中で感情が荒れ狂っていた。













2012.08.15

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