Sing Yestarday
ユンケル ロイヤル
冷たい雨の降る、夜の始まりの時間。
学校帰りに欲しかった新譜を買いにハンバーガーのチェーン店経由でCDショップに行き、お目当ての新譜をぶら下げてチャドと別れた少し後のこと。
何気なしに、駅への近道と通りがかったホテル街、濡れた繁華街のアスファルトが渋滞のテールランプを反射していつもより街がきらきらと光って見えた、その向こう側。
ビニル傘を差した一護は左前方に、見知った男の背中を見つけた。
少し猫背気味の長身。
奔放に跳ねた癖のある、見た目以上に柔らかい髪。
斜めから垣間見えた鼻筋の整った顔立ちを、一護はよく知っている。
見間違えるはずもないそれは唇を触れ合わせ、睦言を交わしながら一昨日の晩に見た顔だ。
声を掛けなかったのは隣に居た女の所為。
後ろ姿で、それと解るスタイル。擦れ違うサラリーマンの顔を見て確信、きっと美女なのだろう。
綺麗なパステルカラーのコートを纏った華奢な腕が、長身の男を濡らすまいとブランド物の傘を掲げている。
連れだって歩く二人の距離はその親密さを見せつけるようで、一護の唇から思わず舌打ちが零れた。
傘を打つ雨音の煩わしさが、急に輪郭を取り戻す。
黒いコートに両腕を突っ込んで歩く浦原の右腕に、女の傘を差していない方の手が絡みつく。
遠目に見えた浦原の眠そうな横顔。
女が伸び上がって浦原に顔を寄せ何かを囁き、そのまま二人はホテルのフロントに消えていった。
道路を挟んでその様を観ていた一護の脳裏に、女の囁く紅い唇だけが印象の尾を引く。
(今度は女かよ)
足早に駅への道を辿りながら、腹の底に籠もり始めたドス黒い感情を飲み込む。
通算、何度目の浮気だ?
男も女も、もう数えるのすら馬鹿馬鹿しい。
いままで、何度その行為を咎めただろう。
浦原の悪癖は、未だ改善されていない。
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