Birdcage Heaven
西條 葎
麗らかな春の陽射しが降り注ぐ昼下がり。
新学期が始まって一週間。
進級して新しい教室に通うようになったとは云え,去年からの持ち上がりのためさして新鮮味は感じられない。
いつものメンバー,いつもの屋上,いつもの昼休み。
屋上をぐるりと囲う柵に背中を預けて見下ろす下にはもう半ば以上散ってしまった桜の大木。
眠てぇな,と欠伸を噛み殺し口に咥えたブリックパックのコーヒー牛乳の最後の一口を啜るのと,ポケットの中で携帯電話が振動したのはほぼ同時だった。
フラップを開くと着信ではなくメールを受信したことを知らせるアイコンが点滅していた。
キィを押してメールの画面を開くと送信者は「浦原」となっていた。
一護は小さく息を吐くと「悪ィ,ちょっと電話してくる」と周りを取り囲む友人達に声をかけて屋上の反対側へと向かった。
「浦原」はここ二週間ほど顔を見ていない恋人だ。
齢は一護よりも十三歳上。大学の研究室に勤務している。
一回り以上も年下のしかも同性の自分に惚れている,などと口にして憚らないところから見てもわかるように,かなりの変人だと思う。
出会ったのは三年前。
一護の父が営む医院に患者として入院していたのが浦原だった。
届いていたメールに会ったのは「会いたい」の一言だけ。
件名も何もなし。
常識がないにもほどがある,と思う反面,どこかくすぐったく甘ったるい気持ちになってしまうのも事実で。
一護は小さく息を吐くと友人達に背を向けるように辿り着いた屋上の端,柵に凭れて通話釦を押した。
コール二回で疲れの滲むかすれた声が「一護,サン?」と呼びかけてくる。
「仕事,終わったのかよ」
「まだ」
「だったらメールなんかしてくるな馬鹿」
我乍ら愛想がない,と思う台詞だったが,電話の向こうの浦原は嬉しそうに「一護サンだ」と声を綻ばせる。
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