celesta.
「……重い。どけ」
膝の上に抱え上げられ,抱き合う格好で達した後,一護は遠のきかけた意識を無理矢理繋ぎとめると自分の肩に顎を載せて荒く息をつく浦原の頭をぺしりと叩いた。
耳元でくすりと零される笑みがくすぐったい。
もう一発ぺしりと叩くとようやく浦原の身体が離れた。
「一護サンには情緒が足りない」
どさりとベッドに倒れこんだ浦原を見下ろして,一護はゆっくりと腰を上げた。
ゴムの被膜に覆われた浦原が自分の身体から出て行く感触に歯を噛み締める。
身のうちにぽかりと虚が開いたような感覚を覚えながらも横たわる浦原の直ぐ横にうつ伏せに身体を投げ出した。
「シャワー浴びなくて平気?」
「った後ですぐ動けっか。馬鹿」
「じゃあアタシが連れてってあげましょっか?頭から爪先までぜーんぶ洗ってあげますよン」
伸ばされた手が一護の頭越しにベッドサイドのボックスからティッシュを抜き出していく。
自身の後処理をしながらそんなことを云う浦原に,一護は「フン」と鼻を鳴らした。
「あんだけやってまーだ足りねぇのか」
前に同じ申し出を受け,頷いたが最後風呂場でもいい様に弄ばれ貴重な休日を一日潰した恨みがある一護の声音は低い。
しかし浦原はそんな一護に構うことなくくすくすと笑っている。
暖簾に腕押し,柳に風。
ぷかりと浮かんだそんな言葉にため息を吐き,一護は腕を伸ばして枕を引き寄せた。
「そだ,一護サンにいいものあるんだ」
「……何だよ」
「ちょっと待ってて?」
ベッドの下に脱ぎ散らかした服の中からジーンズだけを身につけて部屋を出て行く浦原をぼんやりと眺めて,一護は欠伸を噛み殺した。
眠い。
このまま眠ってしまえたら――。
しかし一護は知っていた。
このまま目を閉じても決して眠りが訪れないことを。
ごろりと寝返りを打ち,天井を見上げる。
飾りのないオフホワイトの壁紙。
この部屋の寝室の天井には明かりがない。
壁際に仕込まれた間接照明と後はベッドサイドのランプだけ。
全てを暴くような白々しい蛍光灯の明かりではなくふわりと包み込むようなやわらかな橙色の明かりに照らしだされた自分の腕をぼんやりと眺めて一護は再び欠伸を噛み殺す。
身体の芯にだるさを抱えているものの,頭の中は酷くすっきりとしていた。
のそのそと身体を起こすと腕をぐるりと回し,首をぐるりと回し,ベッドの下に散る服を胡乱気に眺める。
手を伸ばして引き抜いたティッシュでざっと下肢を汚す体液を拭うと構わず一護はそのまま服を着込んだ。
ジーンズに足を突っ込んだ後,寝転んで弾みをつけてそれを一息に腰まで引き上げる。
皺の寄ったTシャツに腕を通しているとドアが開き「あー,もう服着ちゃってる!」と咎めるような声が響いた。
「いつまでも素っ裸で居たら風邪引くだろうが」
「アタシが一護サンにそんなことさせるわけないでしょ。シャワー浴びて,そのまま泊まっていけばいいのに」
「理由がねぇ」
反射的に返した言葉はひどく素っ気無く響いた。
ほんの一瞬部屋に沈黙が下りる。
紛うことなき本音でありながら,一護はまるで自分が酷い嘘をついたような心地に駆られて,思わず視線を鋭くして浦原を睨んだ。
「…なんだよ」
咎めるように浦原が困ったように肩を竦める。
そして壁際のスイッチに触れ,部屋の明かりを点すと皿とグラスが載ったトレイを手に一護の元へやってきた。
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