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ほんの軽い触れるだけのキスから少しずつ深いものへ。
移行させようと抱きしめる腕に力を入れた瞬間,一護がほんの僅か身体を引いた。


浦原は寄せかけた唇を離し,「どうしたの」というようにその瞳を覗き込んだ。
不安定に揺れる瞳は,浦原の視線を避けるように落ち,喉元の辺りを彷徨っている。


「なんで……」


今にも嗚咽が零れそうな震える声。
浦原はその頬に手を伸ばしたが,指が触れる前に一護の手によって阻まれてしまった。


「一護サン?」
「なんで,こういうことすんの」


それは疑問,というより,拒絶だった。


今更何を。
浦原は苛立ちにも似た思いに駆られ,自分の手を掴む一護の手をそのままに,細い腰を引き寄せた。
覆いかぶさるように体重をかけると一護の背が撓る。
そして無理な体勢に喘ぐような息を漏らす瞬間を狙って噛み付くように口づけた。


下唇を食むようにそのやわらかさを味わう。
吐息を全て飲み干し,息苦しさに開いた口を塞ぐように深く舌を差し込んだ。
シャツの方を掴む一護の手が,苦しさを与える浦原を責めるようにきつく握りしめられる。
腰を抱く腕の下に巻き込まれた手は,浦原の手首に爪を食い込ませた。


そうして浦原は存分に一護の唇を味わうと,ようやく身体を離した。
顔を背けて荒く息をつく一護の顎先を捉えて仰向かせる。
そして再び唇を寄せると,ひゅ,と一護が脅えたように息を呑んだ。


「ねぇ,アタシもひとつ聞いていい?」
「……何」


鼻先の触れ合う距離で,顎先を捉えた指をスライドさせて親指でゆっくり唇をなぞる。


「どうしてキミは,応えるの」
「え…」
「アタシがキスするたびに,どうして応えるの」


一護は瞠目し,口を噤んだ。
自分が示した拒絶に返されたのは,怒り。
だらりと力なく落ちた腕をのろのろと持ち上げる。
浦原の袖にしがみつくと,その胸に額を押し当てた。


「浦原…俺…」


ごめん。
掠れた声で何度も云った。
喉の奥から苦い塊がせり上がってくるような心地がした。
自分の発した言葉がひとを傷つける。
意図せずとも目に見えずとも相手が傷を負い,そこからは血が流れ出す。
相手に追わせた傷が自分に跳ね返り罪を刻む。


浦原は繰り返し謝り続ける一護の名を呼んだ。


「ねぇ,キスして」


一護はその声に顔を上げる。
浦原の頬に手を添え,泣くのを堪えたくしゃくしゃの顔を寄せる。
押し当てた唇から伝わるのは熱。そして,思い。


「ね,気持ちよくない?」


浦原の声に,一護は首を振る。
気持ちよくないはずがない。
するのが嫌なわけじゃない。
答えを返す代わりに首に腕を回し強く引き寄せる。
言葉にならない思いが溢れ出たように一護の頬を涙が伝った。















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いつ書いたんだこれ…。

遠い記憶の底からサルベェジ。
タイトル画像は割りとお気に入り。
(2007.06.10)