「浦原」
寝起きの声は無様に掠れて,変な響き方をした。
腰と背中に回された腕を解いてごろりとうつ伏せになる。
頬杖をついて見下ろした肩先に,赤い爪あとをひとつ見つけた。
いつものことだ。
そうは思っても,ため息は出る。
「浦原,起きろよ」
「嫌」
「起きてんのか」
「まだ寝てる」
「起きてんだろ」
「起きてない」
目を瞑ったまま頑なに繰り返す浦原の額をぱちん,掌で叩いた。
「痛い」
うすい瞼が開いて,眇めたように見つめてくる目に睡魔の残滓は窺えない。
「オマエ,ずっと起きてた?」
「真逆」
嗤われた。
嘘だ,とわかってもどうすることもできない。
俺の隣だと眠れない?
安心できない?
そう尋ねることができたらいいのに。
「違いますよ」
「え」
「安心できないから眠らないんじゃない。勿体なくて眠れないの」
「……なんだそれ」
手が伸ばされて頬に触れる。
いつもはひやりと冷たい指が今はほんのりとあたたかくて。
「…愛されてんの」
寝ぼけてたのかもしれない。
不意に口をついて出た言葉はそんなだった。
慌てて誤魔化そうとしたら視線の先,
「わかる?」
浦原はなんでか嬉しそうに笑った。
目で誘われて引き寄せられてキス。
浦原は目を閉じない。細めただけで長い睫毛越しにずっと俺を見ている。
確かめるように。
確かめるように? 何を?
触れた唇を離してそう問おうとしたら,頬に当てられた掌が首の後ろに回されて,たちまち口付けが深くなる。
やめろよ。帰りたくなくなるだろ?
文句はため息に解けて消えた。
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いちゃいちゃちゅー…。
た,たまにはさ。(視線斜め下)
(2006.07.01)