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齟齬。
身の内と外の温度差。
脳内と唇の言葉を紡ぐ速度の差。
俺とアイツの執着の度合い。


俺なんてどうでもいいんだろ。
自嘲で嘯けば「卑屈な子はキライですよン?」と揶揄に満ちた声が返される。
身体を重ねている最中ですら男の声に熱は篭もらない。


人形を抱くのに,熱など必要ないでしょう?
そう云われているような気がして,瞑った瞼の裏が熱くなる。


「最中に考えごとなんて余裕っスね」


声が,つめたく響く。


馬鹿が。
身体はいっぱいいっぱいでも,心に隙間つくったのはアンタだろ。


でも返せる言葉はなくて,きつく歯を立てられた耳朶の痛みに眉間に皺が寄った。


「傷,残すなよ」
「どうして。見られちゃ困る人でもいるの」
「そんなんいねぇよ」
「だったらどうして」
「痛いから」


アンタが残した傷跡が,ひとりになると痛み出す。
そんなの,アンタにゃわかんねーだろ。
気まぐれに呼び出しては気まぐれに抱いて,優しくして。
懐けば突き放して逃げれば腕を伸ばされる。
俺がもがく様を眇めて見てはくつくつ笑う,アンタには。


「なぁ,もう終わりにしようぜ」
「嫌」
「なんでだよ。もうそろそろ飽きてもいい頃だろ」
「飽きるなんてこと,ないっスよ」
「どうして」
「キミだけだから」


前後のくだりをばっさり切って捨てた言葉は心臓に悪い。
そこには何の意味もないはずなのに,どうしてか声が触れた耳から甘さが広がっていく。
縋りつきたくなる。
縋りつけないと思う。


どこにも行けない。
どこにも行きたくない。


いっそ殺せ。殺してくれ。


そう云うつもりで腕を伸ばして首に回して引き寄せた。
近づく瞳の色は深い。
緑に金が散って,まるで万華鏡さながらだ。
くるくる変わるその色に見蕩れて言葉を忘れた。


「好きですよ,一護サン」


嘘だ。信じない。










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アンタに含まされるなら罪だって蜜の味。
(2006.01.14)