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その夜は,まるで凪いだ海のようだった。
闇に小舟を浮かべてたゆたうようなそんな心地がした。

腕の中に抱いたキミの温もり。
唇を押し当てても目を覚ます気配はなくて,その微かな,けれども規則正しい寝息がまるで寄せ手は返す波の音のように響いていた。

キミの幸福を願う。

今だけは,この願いこそが真実。
独占欲も執着もこの海に解けてただ穏やかな愛しさだけがこの胸を満たす。


「一護サン」


名を呼び頬に触れる。
指先から愛しさがにじみ出てキミに色をつければいいと,そう思った。










あの夜から随分遠いところに来てしまった。
キミは同じように腕の中で眠るけど,アタシの胸はざわついたままだ。

ただ,はぐれただけなのか。
それとも見失ってしまったのか。
ねぇ,キミはいつまでここにしてくれる?
縋り付けば許してくれる?受け入れてくれる?

臓腑が熱を帯びて黒い炎が噴き出しそうだ。

ねぇ,キミを殺してもいいですか?
今のアタシにそれ以外にキミを手に入れる術,思いつかないんスよ。










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火は温度が高ければ高いほど青白く冷たい色を帯びる。
(2005.12.09)